現代の酒造りにおいては、事前に目指すお酒の味や香りを決め、生産工程を緻密に組み立てる酒質設計が最重要とされています。 月の井酒造店では、この現代の常識である酒質設計をおこないません。 ワインの世界に、「その土地の味」を意味するテロワールという言葉があります。 畑によって生じる味わいや品質の違いをその土地の個性と捉え、おいしさを語る上で重要なキーワードとなっています。 その土地の個性をいかし、自然の持つ力を存分に発揮させることが、素材本来の味にもっとも近づく。 それは日本酒も同じだと私たちは考えます。 太平洋に面した温暖な気候。 ミネラルの豊富な中硬水。 大洗という環境で、厳選された米を十分に溶かしきり、微生物たちに命の限りに発酵し切らせる。 温度管理はしますが、温度コントロールはせず、あえて冷蔵庫ではなく昔ながらの蔵で醸す。 その先にあるのは、大洗の蔵でしか造れない酒。 その瞬間、その素材、その土地、その蔵の個性を存分に引き出したお酒本来の味わい。 いわば、大洗に授かる酒です。 月の井のお酒をはじめて見た方は、その色味に驚かれるかもしれません。 無色透明ではなく、ほんのりとした山吹色や琥珀色。 それは素材の旨味が凝縮された複雑な味わいの色味です。 その酒は、他に類のないほど突出した緩衝力を誇ります。 緩衝力とは、味や刺激を和らげ、まとめる包容力のこと。 どんな料理もどんな飲み方も受けとめる懐の深さがあり、体になじみ、飲み疲れを抑えるとされています。 素材がもつ本来の個性。 大洗の蔵にしか宿らない個性。 この瞬間にしか生まれない個性。 それが月の井のお酒です。 神様が舞い降りたといわれる大洗に授かる酒を、ぜひ味わってください。 |